壁によりかかり、ぐったりとうな垂れる武司の姿がそこにあったのだ。


あゆみちゃんがいない悲しみに、耐えられなかったのだろう。


カーテンは破れ、椅子は倒れて、部屋中が見るも無惨な状態。


その中に、疲れ果てたように座っていた。


こんなに荒れてたなんて。


さすがにこれは……高広と言えども、同情するんじゃないかな。


と、思っていたのに。











「おいコラ、武司! テメェはいったい何してやがる! そうやって腐ってて、あゆみが帰ってくると思ってんのか!? あぁ!?」










武司に歩みよって、その胸ぐらをつかんで無理やりに立たせ、そう叫んだのだ。


でも……武司に反応はない。


死んでいるかのように無反応で、ただ息をしているだけという印象を受ける。


悲しみがすぎて、精神に異常をきたしたのか、現実逃避で自分の世界に引きこもっているのか……。


どちらにしても、他人が無理やり現実に引き戻すものでもないように思える。


武司自身が、乗り越えなければ意味がないのだ。


「何か言え! 殺すぞコラァッ!!」


そう言うより早く、高広の拳が武司の顔を捉えて振り抜かれた。