部活の後輩から花束を貰う卒業生。


先生にあいさつをする人。


西棟と生産棟をつなぐ渡り廊下を歩きながら、生徒玄関前の光景を高広達と見ていた。


「なんで学校の中を歩いてんだ? もう帰ろうぜ」


卒業証書を入れた筒を、ポンポン言わせながら、高広が退屈そうに呟く。


「良いじゃない。最後なんだからさ、この学校にもお別れしなきゃ……」


「そんなもんか? いつ来てもここにあるんだからよ、別にそんな事しなくても良いと思うけどよ」


「まあ良いじゃないか。俺も何だか明日香と同じ思いなんだよな」


理恵と結子はそんな感じではなさそうだけど、私のわがままに付き合ってくれている。


この渡り廊下ひとつ取っても思い出があるよ。


「赤い人」に見付からないように、身を低くして移動した。


長い廊下だって、どこから見られているか分からなくて恐怖した。


人生の中で、何度も死ぬ事なんて経験できる事じゃない。


「こっちはあまり来なかったよね。明日香は何か思い出があるの?」


理恵には「カラダ探し」の記憶がない。


いや、理恵どころか、私と小川君にしかあの日々の記憶がないのだ。


生産棟を歩いて工業棟。


ここの廊下にも思い出はある。