教室に入ると、皆いつもと変わらない様子で雑談をしている。


「明日香! 今日で高校生活も最後だね。まあ、春からも同じ短大だから、終わりって感じはしないけど」


私の姿を見るなり駆け寄ってきたのは理恵。


「そうだね。アパートも同じだし、これからもよろしくね」


「いいなあ。私なんて、知らない人達ばかりだから心細いよ。明日香達と同じ短大にすればよかったかな」


私と理恵の話を聞いて、日菜子が残念そうに呟く。


「そんな心配しないで。日菜子なら大丈夫だって。どこでだって友達はできるよ」


「だといいんだけどさ。なんか、いつか別れる友達なんてむなしくてさ」


あの日から、日菜子は少し変わった。


記憶はないはずなのに、こんな考え方をするようになったと言うか……人付き合いも、一歩引いた感じになったのだ。


毎月恒例だった買い物もなくなって、それに気づいたんだけど。


卒業式が始まるまでの時間、私達はそんな話をして最後の日を心に刻んでいた。









そして……卒業式が始まった。


3年間の思い出が、この式に凝縮されているかのように思い出されて、至る所からすすり泣きが聞こえる。