もう一度校舎の中に戻ろうかと考えたけど、振り返るとドアが閉じていて、私は諦めて校門へと向かって歩き出した。


トボトボと一人で歩き、校門まであと少しという所で……私の身体を、ふわっとした感覚が包んだのだ。


まるで誰かに抱きしめられているかのような。









懐かしい……真っ先に思ったのはそれだった。


「留美子……もう、どこに隠れて……」










そう言いながら振り返ったけれど、そこには誰もいなくて。


皆の声が聞こえたのに、姿が見えない事が悲しくてたまらない。


大切な友達がいなくなったんだと、改めて実感させられたみたいで、胸が張り裂けそうになった。


誰もいない、夢の中でさえも、会いたかった友達に会えない悲しみに包まれて校門をくぐると、私は光に包まれて緩やかに眠りから覚めて行った。












いつもとは違う特別な朝。


春の朝日が射し込む部屋の中で私は目覚めた。


いつの間にか泣いていたみたいで、それを拭いながら、今見た夢とあの日の事を考えていた。


遥がいなければ、私はこの特別な朝を迎える事ができなかったんだろうなと思うと、申し訳ないような気持ちになった。