私が歩くのが遅いのかな?
夢だから、なんだかふわふわして、思うように歩けないんだよね。
それでも、その声に導かれるようにして生産棟に向かってなんとか歩く。
「もう、喧嘩しなくても良いじゃない。気遣ってるだけだよね」
「彼は彼なりに悩んでいるんだよ。僕達は答えを出すのを待とう」
生産棟に入って、少し歩いて工業棟へ。
どうして私がこの話し声が気になるのかわかった。
話しているのは……あの日、消えてしまった皆だ。
留美子に美雪、武司に健司、八代先生。
そして遥。
声に追い付こうと走るけれど、全然追い付けない。
どれだけ走っても、声は近くから聞こえるのに姿は捉えられないのだ。
「皆、待ってよ!」
呼び掛けてみるけど、思ったよりも声が出ていない。
そんな私を無視するかのように話し声は続く。
「俺ばかり責めるんじゃねぇよ!……今更どんな顔で会えば良いんだよ」
「やっぱり怖いんだな、袴田は」
学校中を動き回り、辿り着いた生徒玄関。
ドアが開いていて、そこから外に出る。
もう声が聞こえない……ついに皆の姿を見る事が出来なかったな。