遥の左の脇辺りに穴が開いているのが。


「おい、遥! すまねぇ、もうちょっと早ければ」


慌てて高広も駆け寄り、抱き起こすと、息も絶え絶えの遥がかすかに目を開けて、私と高広の顔を見て、口を開いた。





「いい……のよ。私は……もう、こんな世界で……生きていたくなかったから……これでいいの」






カラダ探しの中ですべてを失って、美紀の「呪い」が解けても何も元に戻らなかった。


そんな世界は、遥には生きる価値がないって言うの?


「お、おいお前ら! どうにかならないのかよ! 遥が死にそうなんだよ! 何とかできないのかよ!」


珍しく取り乱した高広が、黒くて怖い人を押さえていてくれた3人に懇願するけれど……遥に似た女の子は首を横に振ったのだ。




「私には……そんな力はないわ。それに、もう時間がない」





そう呟いた次の瞬間、魔方陣の光がより強くなり、誰かが泣いているような声と、奇妙な事が部屋に響いたのだ。


何……この声と音。


地下室が震えているような。


それは間違いではなかった。


グラグラと床が揺れ、天井が少しずつ崩れ始めていたのだ。