「死ねコラ!!」







迫る黒くて怖い人に高広が殴りかかる。


煙のような化け物を相手に、攻撃なんて通用しないかと思われたけど。


勢いのついた高広の拳が、その腹部にめり込む。


それだけでは終わらない。


何度も何度も攻撃を加え続けて、黒くて怖い人を怯ませているのだ。


そして、私は気づいた。


高広に殴られるたび、黒くて怖い人の身体から、黒い煙のような物が弾かれるように飛び出して、壷に吸い込まれているのを。


「効いてるの? 煙を殴るなんて……」


目の前の光景を不思議に思い、そう呟くと、黒くて怖い人の脚にしがみついているあゆみちゃんが私に笑いかけた。


「私達が押さえてるから。それより明日香さん! こいつが消えて、『赤い人』が吸い込まれたら、壷を壊すんだよ!」


「何が何だか分からないけど……あの子の言う通りね。ほら、壷の近くに行きましょう」


固まっていた私の肩を押し、高広達を迂回するように歩かせる遥。


その間も一進一退の攻防は続く。


黒くて怖い人を殴り、逆に殴られ、それでま高広は前に出続けた。


「何だテメェ、全然強くねぇな! 武司の方がずっと骨があるぜ!」