「あゆみがなんでこんな所にいるんだよ……お前、死んだ事になって……」


武司の妹のあゆみちゃん。


それが私達の前にいて、必死になって黒くて怖い人を止めてくれている。


「高広さん! どうにかしてこいつを追い返して!! じゃないと『赤い人』が来られない!」


私達にはわからない何かを、この3人は感じ取っているのだろう。


「おう……任せろよ。1対大人数ってのが気に食わねぇけどよ、やるのは俺だけだ、文句ねぇよな⁉」


吠えた高広に、黒くて怖い人も呼応するかのように暴れ始める。


3人は、振り払われないようにと必死にしがみつく。


「伊勢君! 美子を浄化させるためにこいつを何とかして!」


遥に似た女の子が、黒くて怖い人と対峙する高広にそう言い、高広も小さく頷く。


暴れながら、黒くて怖い人がこちらに向かってくる。


私は渡されたスコップを構えたけど……気圧されるようにジリジリと後退していた。


怖くて、ここから逃げ出したいとさえ思う。


だけどそれを辛うじて止めてくれたのは、黒くて怖い人に立ち向かっている皆の姿だった。


戦っているのは私だけじゃない……そう思える事ができたから、逃げずにここに留まれていたのだ。