私達の周りを取り囲むように浮遊する人魂を数えて、遥が私の制服の袖をつかんだ。


「怖がるなんて今さらだよね……こんな人魂くらい」


「赤い人」や黒くて怖い人に比べれば、ただ浮かんでいるだけの塊ぐらいどうって事はない。


廃屋の玄関。


チェーンを外して、廃屋の中に入った私達は、さらに重い空気に包まれた。


怖い……真っ先にその感情が溢れてきて、なぜか目には涙が。


「感じる……武司よりも強烈な殺意をよ……こりゃあ、マジでやばいかもな」


高広でさえ弱気な言葉を呟く。


嘘でもいいから強がってよ。


頼りにしてる高広がそんなんじゃ、ここから先が心配だよ。


物音ひとつしない屋内、ホールを横切り、階段の横の倉庫へと向かう。


携帯電話を取り出して、私は照明を前に向けた。


何も出てこないで……せめて、棚を動かすまでは。


今、高広が何かを止めるために私達から離れたら、棚を動かせなくなってしまう。


そうなりませんようにと、祈りながら倉庫に入った。


倉庫の一番奥、地下に続く棚の前まで来た私達は、それに照明を向けてフウッと溜め息を吐いた。