「んな事どうでもいいだろ。いよいよ行くぞ」
朽ちた門に手をかけて、ゆっくりと押し始めた高広が、私達を見もせずに呟いた。
覚悟は……できている。
何があっても、留美子に言われた通り地下室にある壷を破壊する。
「赤い人」が吸い込まれたら。
「皆……信じてるからね」
美子のお墓がある山の方を見て、私はそう呟いた。
門の中に入ると、空気が一変した。
足を一歩敷地内に入れただけなのに……息苦しい。
身体が重くて、軽く首を絞められているかのような感じがする。
それは私だけじゃないようで、高広も遥も、その圧迫感のようなものを感じているようだ。
「まるで『帰れ』って言ってるみたいね。あせってるのかしら? 黒くて怖い人は」
フフッと、意地悪そうな笑みを浮かべて廃屋をにらんだ遥。
「そう言われても帰れないけどね。高広も遥も、死んでも文句言わないでよ?」
これは「カラダ探し」の外の話だから、美雪のように死んでしまう可能性は十分にあるのだ。
黒くて怖い人……それだけじゃない。
もしかすると、「赤い人」も来るかもしれないのだから。