……と、思ったんだけど。
遥は、日菜子への怒りを私に押しつけるように、するどい視線を向けたのだ。
「それよりも明日香は何? まさか放送室のドアを開けようとしたんじゃないでしょうね!? どうして背後に『赤い人』なんて呼ばれたの!?」
私は悪くないのに、どうして怒られなきゃならないの!?
あれ? あの校内放送を聞いていたって事は……遥は「赤い人」に殺されていなかったんだ?
もしかして、私の背後に呼ばれた事で、しがみついていた「赤い人」が離れたのかな?
いや、それよりも今は誤解を解かないと。
「違うよ! あの辺りに武司がいてさ、近よったら『赤い人』を呼ばれたの。死んで、美紀に操られたんだと思う」
西棟の廊下と、大職員室前の廊下が交わる場所を指差して昨夜の事を話すと、遥は私から目をそらして何かを考えているようなしぐさを見せた。
「どうして……死んだの? 『赤い人』に襲われたなら、しがみつかれて上半身と下半身を分断されるはずよ? あんな状態で振り返るなんて思えないし……」
「病気か何かで突然死したとか?」
私の言葉を否定はしなかったものの、どうも納得をしているようでもない。