「もうひとりは……武司だよ」
そう呟いて、チラッと高広を見ると……目を見開いて、ジッと私を見詰めていた。
何を考えているのだろう。
また、皆の邪魔をしているんじゃないかとか、考えているのかな。
でも、そうじゃない。
何も言わず、何もせず、死んでしまっただけ。
それが逆に、私達には大きなマイナスではあるわけだけど。
そこまでは言う必要がない。
それから高広は何も言わずに、私達は靴を履き替えて教室に向かった。
その途中、西棟の二階に上がった所で、教室の方から遥が現れて、私を見て生産棟を指差した。
ついてこいという事なのだろう。
私は高広と留美子と別れて、遥の後について歩いた。
少し歩いて渡り廊下。
そこで遥が立ち止まり、生徒玄関前の広場を見下ろしたのだ。
「香山さんはここで、外にいる『赤い人』を見たのね。次からは気をつけてもらわないと」
正直意外だった。
あんなミスを犯した日菜子を怒るわけでもなく、ただ冷静に呟いているだけなんて。
てっきり、立ち直れなくなるくらいの嫌味を浴びせるのかと思ったけど。