「そうだぜ留美子。お前、何言ってるんだ? 龍平って誰だよ」


私にもわからない名前。


高広がそう言った直後、悲しそうな表情を浮かべた留美子。


倒れているわずかな時間で、夢でも見たのかな。


「大丈夫かい? 柊さん」


八代先生も心配そうに留美子の顔をのぞき込む。


突然目の前に現れた八代先生の顔に、驚きを隠せない様子の留美子。


何か……違和感があるんだよね。


八代先生の顔なんて見慣れてるはずなのに、まるで初めて見たかのような反応だったから。


「『赤い人』の……『呪い』を解かなきゃ」


八代先生から顔をそらし、そう言った留美子の言葉で、私の身体に冷たいものが駆け巡った。


どうして留美子がその考えに至ったのか。


美雪が美紀の「呪い」を解くから大丈夫と、楽天的だった留美子が。


「留美子、お前何を言ってるんだ? 美雪が今、美子に教えてもらって、美紀の『呪い』を解こうと……」


翔太もまた、美雪を信じきっている。


その点では、留美子も翔太も同じだったのに。


「違う! 美紀じゃない! 本当に解かなきゃならないのは、美子の『呪い』なの!!」


本当に、気を失っている間に何があったのだろう。


私なんて、今でもまだその手段がわからなくて悩んでるのに。


留美子の目は、完全にそれを見据えている。


「うぅ……何なんだチクショウ。急に目眩が……」