廊下で待っている間、中の事が気になって話をほとんど聞いてなかったよ。


皆、美雪に駆けよって、口々に話す。


どうやら話は聞けたようで、後は「呪い」を解くだけのようだ。


「……ここからは、私ひとりの問題だね」


美雪が呟いたその言葉に、「私も『呪い』を解こうとしているんだよ」と、言いそうになったけど、それをなんとか飲み込んで深呼吸をひとつ。


「大丈夫……美雪はひとりじゃないよ。皆、信じてるからね」


私もやれる事はやったからねという思いを込めて、美雪を抱きしめて、その言葉を贈った。


「ありがとう、明日香……そうだ。明日香の時、美紀が迎えに来た場所は……屋上だよね?」


「うん……」










なんだろう、この感じ。










上手く言葉では言い表せないけど、何か嫌な予感がする。


「じゃあ、私も屋上に行ってみる。美紀に会わなきゃ」


そっと私から離れて……そう呟いた美雪の目に、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。


屋上に行こうとする美雪に、皆は留美子を皮切りに、お守り代わりの物を次々と渡す。


私は……これと言った物を持っていなかったので、ポケットに入っていたハンカチ。


これでお別れ……なんて不吉な考えが過ったけれど、そうじゃない。


これは、返してもらうために渡したんだと、階段を上る美雪の背中を見送った。