立場が弱いんだろうなあ、八代先生は。
何とか田村先生の誘いを断り、私達に気づいた八代先生。
「森崎さんに伊勢君。あ、わかってるね? そこの赤いラインからこっちに来てはダメだよ。テスト前だからね」
そう言いながら立ち上がった八代先生は、私達の方に歩いてきた。
この学校では、テスト前になるとこうやって職員室に赤いテープが貼られる。
生徒が入れる限界ライン。
そこまで先生がやってきて用事を聞くというのだけれど……テスト勉強なんてしてないよ。
今抱えている大問題が解決しないとね。
「それより、大丈夫そうですか? 先生にかかってるんですけど」
教師として見ると、その中では非常に頼りなく思える八代先生。
「カラダ探し」の事に限って言えば、これ以上ないほど頼れるんだけど。
「おいおい、僕はこれでも先生なんだよ? 鍵くらいどうにでもなるさ」
「それならいいんですけど。準備ができたら、私に電話してくれますか? 電話番号教えておきますので」
何度も大職員室に確認しに行くのは面倒だし、何よりそんな事をしているのが他の先生に知れたら怪しまれる。
そうなってしまえば、私達以外には誰からも忘れられている美雪はどうなるのか。