いい事も、悪い事もさ。


学校に近づくと、校門で翔太が待っていた。


どれくらい早くに来ていたのか……イライラした様子で、歩いてくる私達をにらみつけている。


「遅いぞ! 今日は何の日だと思ってるんだ!」


気合い十分と言った感じで、髪型もバッチリと決まっている。


先日までのぼんやりとした姿が嘘のように張りきって。


「ああ? 十分早いだろうが。お前が異常なんだよ。イベントの会場で並ぶ徹夜組じゃねえんだからよ」


皆わかってるよ。


だからこそ、こうやって早くに登校したんだからさ。


「あれは30分くらい待ってたね……美雪が好きで好きでたまらないんだよ、翔太」


留美子の言葉にうなずきながら私は思わず笑ってしまった。


変な意味じゃない。


私を探すために、目覚めるまでの期間、ずっと駆け回っていた高広と同じだと感じたから。


「あのガリ勉……うぜぇな。一発殴って黙らせるか」


「そ、それはやめてあげてよ。翔太は舞い上がってるだけなんだからさ」


グッと拳を握りしめた武司をなだめて、何とか殴る事だけは止めた。


そしてドキドキしながら校舎に入って……生徒玄関前ホール。


そこに入ると、長椅子に寝転んでいる美雪の姿があったのだ。