少し歩いて、革靴で来た事を後悔し始めた頃に、その広場は見えてきた。
手入れがされていない、辺り一面短い草で覆われた小さな広場が。
「……あった、あれじゃない?」
遥の視線の先、広場の奥の方にある岩。
それが美子の墓石なのだろうか。
近づいて見てみると、その岩の前に割れた湯のみが置かれている。
「たぶんそうだと思うけど……墓石がこれだとすると、どこに埋められてるの?」
「どこって……この辺りでしょ? 今、私達が立ってる真下かもしれないし違うかもしれないし」
遥はどこか他人事なんだよね。
土を掘らないといけないって言うのにさ。
「えっと……まだ道は続いてるんだよね。だったら……たぶんこっちかな」
確信はまったく持てないけど、道の真ん中に埋葬されているとは思えないから。
だとすると、この墓石から小野山邸側にある。
……と、いいんだけど。
「明日香、もう一度だけ聞くわ。本当に掘るの? お墓に服を供えるだけじゃダメなの?」
墓を掘り返す事を躊躇しているのか、神妙な面持ちで尋ねる遥。
できれば私もそうしたいけど……やっぱり自分の近くにあってこそだと思う。
「地面の上に服が置いてあっても、地面の下にいる美子は取れないよ。だから掘るよ」