学校に戻り、旧校舎でスコップを借りて山に着いた時には、もう11時半。
遥が言った通り、山の入口には古ぼけた鳥居があって、そこから山に入れるのだという事がわかる。
「完全に斜面ね……ゆるやかだけど、これは足にくるわよ」
服が入った紙袋を持って、山を見上げる遥。
スコップを持っての登山か……これ、ずっと持ってると地味に重いんだよなあ。
「広場が見えたら岩を探せばいいんだよね。そこがお墓か……」
歩き続けてたらお腹が減ってきたよ。
早く赤い服を美子に渡してあげて、お弁当を食べたいな。
一応荷物は持ってきたけど、お墓の近くでは食べたくないし、食べるとしたら山を下りてから。
「早く行きましょ。さっさと終わらせてしまわないと。どれだけ時間がかかるかわからないんだから」
そんな事を話しながら、私達は山肌が露出した道を歩き始めた。
木のトンネル、キラキラとこぼれ落ちる木漏れ日。
墓を掘り起こすという目的さえなければ、気持ちのいいハイキングとでも思えていたのにな。
こんな事ならスニーカーで来ればよかったよ。
革靴でこんな所を歩くのは、ちょっと無理があったかな。