「昨日メールしたでしょ? 買い物、付き合ってくれるんだよね?」


やっぱり、覚えてるわけがないか。


私は別にそれでいいよ。


だけど、期待した遥が可哀想だな。


「明日香……私、先に行ってるから」


震える声でそう呟いた遥は、この場から逃げるように走っていった。


「ど、どうしたの? 三神さん。泣いてたみたいだけど、何かあった?」


「んーん、何でもないよ。それよりゴメン! やらなきゃならない事ができちゃってさ、今日は行けないんだ。埋め合わせはするから!」


顔の前で手を合わせて謝った後、教室から出ていった遥を追いかけるように私も走りだした。


「え!? ちょっと……もうっ!」


背後から聞こえた日菜子の声に、何度も何度も心の中で謝って。


廊下を走って階段を下り、保健室の前の廊下を通って外に出た。


「あ……遥」


西棟と生産棟の間。


そこに顔を手で覆っている遥の姿があったのだ。


ヒクヒクと肩が小刻みに震えている。


辛かっただろうな……もしかして記憶が消えてなくて……なんて思ったかもしれないから。