中に入ってみると、一番前の席で机に伏せて座ってる遥の姿。
友達と楽しそうに話す日菜子は、そんな遥には目もくれない。
幸恵の姿は……ない。
何か、悲しいな。
片方の記憶がないだけで、こんなにもの悲しく見えるんだ。
私は自分の机に荷物を置いて、遥に近づいた。
「遥、おはよう」
私の声に身体を起こし、赤くなった目を私に向けた。
「明日香……私に何か用?」
涙を手で拭って、強がって見せる遥。
泣いていたのに無理しちゃって。
「えっとさ、ほら、美子のお墓の場所を聞きに行こうかと思ってるんだけど。遥も一緒に来てよ」
「……こんな朝から行ってどうするのよ。授業をサボって墓を掘り返しに行くの? もう『カラダ探し』は終わったのよ」
「まだ赤い服を買ってないからすぐには行かないけどさ、夜にお墓に行くよりは……明るいうちに行きたくない?」