言ってもわからないから言わないけど、小川君が特に頑張ってくれたんだよ。
「知らなかった……でも、明日香が無事でよかったぜ」
安心したように、フゥッと溜め息を吐いた高広。
「ありがと。あとは美雪が目覚めて、『呪い』を解くだけだね」
にっこりと笑ってみせると、高広が照れたような笑顔を向ける。
そうそう、高広は照れないとらしくないよ。
「そうだよねぇ。本当に上手くいくのかな。『呪い』を解いたら、どうなるんだろうね?」
本当にどうなるんだろ。
それがわからないから、私は美子の「呪い」を解こうとしているんだけどね。
もしも何も起こらなくて、「赤い人」が檻から解き放たれてしまった時の事を考えて。
それの鍵を握るのが、あの黒くて怖い人の存在だ。
「昨日」の夜、私が眠りに就く前に、中庭から私達を見ていた。
「赤い人」が怒ってすぐに「カラダ探し」が終わってしまったから、「赤い人」に戻れなかったのかな。
それにしても、校舎の中じゃないなんてね。
「……中庭か。なんだったんだろ、あれ」
今思い返してみれば、まるで悪い事をして、家の中に入れてもらえなくなった子供みたいな姿にも思えるよ。
「ん? 明日香、何か言った?」