誰よりも優しくて、誰よりも勇気がある。
それは、武司と一緒にいる時に培われたものじゃない。
元から持っていたけど、出せなかっただけなんだという事はわかっているよ。
「任せてよ。小川君のためだもん。頑張るよ」
私がそう言うと、小川君は棺桶に近づき、その中に足を入れた。
「あ、次はおじちゃんが遊んでくれるの? お姉ちゃんがよかったけど、まあいいか」
失礼な事を言いながらも、小川君が入る事に美紀も納得した様子。
「ハハッ……あー、ちょっと小さいかな。僕は太ってるから……」
そう言いながら、小川君は棺桶の中に横になった。
「待ってるからな。また会おうぜ」
武司が小川君に向けてそう言った瞬間、私は激しい眠気に襲われて……その場に倒れ込んだ。
棺桶の中に入った時と変わらない。
眠りに就くまでにそんな事を考えて。
最後にこの空間で見たのは……中庭からこちらの様子をうかがっている黒くて怖い人の姿。
だけど、もうだまされる事はない。
私達の「カラダ探し」は終わったのだから。