そして、武司は私に気づいたのか、ゆっくりと身体の向きを変えて私を見たのだ。
その目は、焦点が合っていないようで、フラフラと宙を泳いでいる。
と、感じた次の瞬間。
『赤い人が、森……香さんの背後……れました。振り返って確認……下さい』
これは……皆から聞いた事がある。
死んでも、目と脚があれば、美紀の操り人形になってしまうとかいうやつなの?
でも、身体には「赤い人」にやられたような傷は……。
校内放送に、思わず振り返ってしまった私の目は……死の存在を映し出したのだ。
「ねえ、赤いのちょうだい」
私は実習室で「赤い人」の足を見てしまった。
つまりこれで……。
そう考えている間に、「赤い人」の腕が私の腹部を貫いた。
気を失う前に見たのは……満面の笑みを浮かべて、私の血を浴びる「赤い人」と、無表情で見下ろす武司の姿だった。