こんなの……やり切れないよ。


「それが……私達に『カラダ探し』をさせた理由なの?」


「そうだけど、何か文句ある? 私は悪くないでしょ? 私に嫌われるあなた達が悪いんだから、文句なんてお門違いよ」


これが幸恵の本性か。


おとなしくしていたと思っていたけど、こんな事をいつも考えていたのかと思うと、不気味ささえ感じるよ。


「何なんだこいつはよ。こんなひねくれた奴のためにカラダを探してたってのか? ふざけんじゃねえぜ」


武司の顔が怖い。


今まで一度も見た事のないような、怒りに満ちた目だ。


「殴りたかったらどうぞ。その恨みを持って、私はまたこの中に入るから。そしてもう一度味わうがいいわ。何度も死ぬ苦しみを」


幸恵の事はそんなによくは知らなかったけど、ここまで狂っているなんて思わなかった。


「赤い人」に遭遇したのはきっと偶然なのだろう。


でも、その偶然がくだらない嫌がらせするためだけの手段に変わってしまった。


幸恵にとっては、これ以上ないチャンスだったに違いない。


自分がこの空間を支配して、嫌いな私達が殺されるのを見るというのは。


「ああ? 頭悪いのかテメェは! そんな事させるわけがねえだろうがよ!」


長椅子の座面に足をかけた武司が幸恵に飛びかかった。