おかしな事を言ってるなと思いながらも、どうして美紀がここにいるかという事をなんとなく理解した。
美紀は幸恵に放送室から追い出されて、ずっと隠れていたんだ。
だから、遊びが終わったと思って、出てきたと考えればいいかな。
「あ……ほら、そんな事を言ってる間に来たよ」
残った右手の人差し指で東棟側を指差した小川君。
ホールの入口に足をかけた幸恵が……立ち止まりもせずに私達に近づいた。
無表情ではない……どこか微笑んでいるような気さえする。
不気味な笑顔。
暗いからそう思うのか、それとも本当に不気味なのか。
私達の横を通り過ぎた幸恵は、棺桶まで歩くと、ゆっくりと倒れ込むように集めたカラダとひとつになった。
そして、しばらくして起き上がる幸恵。
私達が嫌い……美紀の言葉が気になって、生き返った幸恵に声をかける事もできなかった。
「よお、お目覚めかよ。感謝しろよな。たいして仲良くもねえお前のために頑張ってやったんだからよ」
武司のその言葉に、幸恵が小さく口を開いた。
「袴田武司……乱暴者で自分勝手でわがまま。何でも思い通りになると思ってるバカ。嫌い」