私は、カラダを持って東棟へと走った。
日菜子にいったい何が起こったのかな。
一抹の不安を感じながら、私は東棟に入り、すぐ北側にある階段を駆け下りた。
「赤い人」は怒っていないから、黒くて怖い人が出たわけではないよね。
だまされてホールにたどり着けなかったわけでは。
だとすると何なの?
日菜子がホールにいない理由。
「もう! さっぱりわからないよ!」
階段を下りて一階。
事務室の前を通っている時に、校舎を震わすあの声が聞こえた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
思わず立ちすくみ、カラダから手を放して耳をふさぐ。
小川君は……何をしたの!?
「赤い人」が怒った声だよね。
いや、それよりも、小川君は大丈夫なのかな。
少しでも生きている可能性があるうちに、このカラダを納めなきゃ。
床に落とした幸恵の右胸を拾い上げ、私はホールへと急いだ。
ホールの中には誰もいない。
日菜子も……遥も。