今、放送室にいる幸恵に見つかろうが、関係ない。


渡り廊下の辺りで、「赤い人」を振りほどきながら必死に耐える小川君の姿が見える。


「赤い人」は歌を唄う事すらできずに、何度もしつこくしがみつこうとしているけど。


あとはカラダを納めるだけ。


今からだと、どれだけ唄われたとしても、小川君が殺されるまでにすべて終わる。


小川君に「赤い人」を任せて、私は大職員室の前の廊下へと向かった。


ホールから吹き抜けになっているこの場所から、一階にカラダを落とす。


「日菜子! カラダを持って来たよ! 受け取って!」


下には日菜子がいる。


そう思って声を出したけど……返事はなかった。


私より足が速い日菜子なら、とっくに着いているはずだけど。










何かおかしい。











ここから見える棺桶の中に、左胸は納められているから、遥もいるはずなのに、どうして誰もいないの?


「もうっ! どうなってるのよ!! どうして誰もいないの!?」


下にカラダを投げようかとも思ったけど、何か変な事が起こっているなら困る。