「お顔もお手てもまっかっか~」
私の力では無理だとわかっていた。
だからと言って、誰も助けてはくれない。
もうダメなんだろうなと、諦めてペンチを放し、床に落ちたそれがカタンと音を立てた時だった。
「髪の毛も足……」
そこまで唄って、突然腹部の圧迫感がなくなったのだ。
何がどうなっているのか……。
『赤い……東棟二階に現れ……気をつけて……』
その校内放送が流れて、私は理解した。
私にしがみついていた「赤い人」は、誰かが振り返って呼ばれたんだと。
そして、今日「赤い人」を見たのは中島君しかいない。
中島君が、私を助けてくれたのだと。
「赤い人」を引き離すために中島君が逃げて、私を助けるために振り返ってくれた。
そう信じたい。
震える脚で何とか身体を起こして、この準備室を調べようと棚まで歩いた。
死を覚悟してしまった私が、これ以上頑張る事ができるのかと不安になりながらも、手だけは動かして。