迷ってるの?
私がここに押し込まれた事を、「赤い人」は気づいたのか気づいていないのか。
少しでも動けば気づかれてしまうこの状況では、私は動く事ができない。
中島君がここに「赤い人」を残していったら、間違いなくドアを開けられてしまう。
「お、おい!! 俺はここだって言ってるだろ! どうしていつも追ってくるのに、こんな時は追ってこないんだよ!!」
悲鳴にも似た中島君の声が廊下に響く。
だけど、その声は「赤い人」には届かずに……カタッと、ドアがかすかに揺れたのだ。
カラカラカラ……。
「赤い人」は……ここに隠れている私を選んだ。
ドアが開かれた。
冷たい空気が室内に流れ込む。
死の恐怖を伴った空気が。
開かれたドアの隙間からかすかな光が射し込み、ドアを開ける「赤い人」のシルエットが浮かび上がった瞬間。
「キャハハハハハハッ!!」
室内に響き渡った鼓膜を破らんばかりの笑い声が私の脳を貫いた。
こんな事になるのなら、逃げておけばよかった。
そう考えている間にも、私に飛びついて腕を腹部に回す「赤い人」。