慌てて駆け寄った私は、手に取りそうになる気持ちを抑えて、それに照明を向けた。


幸恵の胸……右胸。


見つけたという喜びと、左胸じゃなかったという悲しみが同時に私の胸を貫く。


もしも残りの場所になかったらどうしよう。


あの日、音楽室で中島君が見逃した幸恵の左胸。


それまでに調べた所と言えば、工業棟と、生産棟の一階と三階の一部。


少し……と言うには調べる場所が多すぎる。


「お願い、誰か左胸を見つけて」


そう祈りながら右胸から離れて、ロッカーに向かった。


開けて見ても左胸はなくて。


廊下の物音に注意しながら、私は隣の教室に向かった。


「赤い人」は今、どこにいるんだろう。


歌声が聞こえるのも嫌だけど、どこにいるのかわからなくて、まったく聞こえないというのも気持ちが悪いよ。


生産棟の一番奥まで続く長い廊下。


「赤い人」に見られているんじゃないかと考えると気味が悪い。


身を引き裂かれそうな恐ろしさの中、私は隣の教室の中に入った。