足音が……窓際に向いてしまった。


ここにいたら、間違いなく殺されてしまうのに、動けばその音で気づかれると思うと、動く事ができない。


歌声の発生源はもうすぐそこまで迫っているのに……。


机の陰から姿を見せた赤い足に……私は死を予感した。


初日とは言え、カラダをひとつも見つけられなかったな。


死を覚悟して、「今日」を諦めそうになった私の耳に……その音は聞こえた。













ゴトンッ!












隣の部屋から聞こえた物音に、「赤い人」の動きがピタリと止まった。


そして……。












「キャハハハハハッ!!」












耳が痛くなるほどの、雄叫びのような笑い声が部屋中に響き渡り、「赤い人」は踵を返して教室から出ていった。









……助かったの?


そう感じたのは、「赤い人」への恐怖で改めて身体が震えだしてから。


それにしても今の物音は……まさかあの遥がそんな凡ミスを犯すとは思えないんだけど。


何にしてもここにいてはダメだ。


せめて二階に……できれば生産棟くらいまでは逃げなきゃ。


机を支えにして、震える身体を何とか立たせ、私は教室の入口へと歩いた。