「そうじゃないんだよ……高広の事は好きだもん。キスしてもらって、うれしかったもん」


起き上がりたかったけど、脇腹が痛くて横を向くのが精一杯。


でも、どうして泣いているのか……その意味がやっとわかったような気がするよ。


「だったらどうして泣くんだよ……」


「言わない」


言わないんじゃなくて、言えない。


今日の出来事は、「明日」の高広は覚えていない。


私が今日、「カラダ探し」を終わらせても、この高広しかキスをしたという事を知らないんだ。


この思い出さえも共有できないんだと、悲しくなって泣いたんだ。


それは、この高広のせいじゃないから。


「カラダ探し」を始めてから、出会った高広は偽者なんかじゃない。


どの高広も高広で、私が好きな人に変わりはない。


だけど、変化する「今日」は……変化する世界は、私と高広の思い出まで連れていってしまう。


「明日」になればまた違う世界……遥が言っていた事が、痛いほどよくわかる。


それから私と高広は、手をつなぎながらベッドに寝転がっていた。


涙はもう止まって、ふたりで天井を眺めているだけ。