「武司!! た、助けて!!」
恐怖を振り払うように叫んで、何とか二階にたどり着こうと、必死に足を上げる。
そして……最後の一段に足をかけようとした時。
私の足が何者かにつかまれて、グッと後方に引っ張られたのだ。
「えっ!? あ、わわわわっ!」
もう、武司の部屋はすぐそこなのに……。
バランスを崩して、後方に倒れるように身体が天井を向く。
何が起こったのかわからない。
わからないけれど、このままじゃまずい!
倒れそうになった私は反射的に手すりをつかんで、落下する事だけは食い止められたけど、階段の角にお尻や脇腹を打ちつけて倒れた。
そんな事はお構いなしに、私の足をつかんだ手。
その手の主が……幸恵が私の身体の上を這うように迫る。
ジワジワと、できるだけ恐怖を与えようとしているかのように。
ゆっくりと、その顔が私の視界に侵入してくる。
そして、10センチも離れていない距離、目と目が合ったその時に、幸恵はニタリと顔を歪めて笑ったのだ。