『……人が、工業棟一階……れました。皆さん、気をつけ……ださい』











「ねえ、赤いのちょうだい」











日菜子と校内放送、そして「赤い人」の声が聞こえた。


何が起こったのか……振り返って確認しようとした私の腕を引っ張って、遥が駆けだしたのだ。


いったい何が起こったのかわからない。


どうして日菜子の前に「赤い人」が現れたのか……どこで見てしまったのか。


「あなたまで振り返って『赤い人』を見るつもり!?」


そんな事をする暇があったら逃げろと言わんばかりに腕を引く。


工房から出た時、背後からドンッという激しい音と、日菜子の小さな悲鳴が聞こえた。


「分かれるよ!! 上手く逃げなさい!」


廊下に出て、トイレの前で私の腕を放した遥は、そう言い残して廊下の奥へと走っていった。


上手く逃げろって言ったって……どこに逃げればいいの!?


更衣室に実習室……実習室の方が広くて逃げやすそうだけど。


迷っている時間なんてない。


日菜子を殺せば、すぐに「赤い人」は私達を追ってくる。


運を天に任せて飛び込んだ実習室。