「んー……『11月30日。美子は生き返らなかった。よほどショックだったのか、美紀はいもしない美子の影を追いかけて遊ぶようになったし、夏美もおかしくなり始めた。やはりあんな儀式はやるべきではなかったのか。あれを信じるなんて、どうかしていた。私も昨日からズッシリと身体が重い。何かがのしかかっているような苦しさを感じる。私の家族にこれ以上の不幸が起こらないでほしい。美子が私達を見守ってくれるよう、あの小さな山に、明日埋葬する』これが最後だな。あとは何も書かれてねぇよ」
美子は生き返らなかった……儀式か。
知りたかった事のいくつかはここに書かれている。
八代先生と高広が言っていた事、翔太の予想は間違っていなかった。
父親は、美子を生き返らせようと、蘇生術を見よう見まねで施した結果、黒くて怖い人を呼び出してしまったんだ。
「美子が死んだ日はいつなの? 几帳面な父親のようだから、もしかするとその事が書かれているかもしれないわ」
「まあ待てよ。んー……書いてねえな。この前は27日だ。たいした事は書かれていねえよ」
1枚日記をめくり、前日分を見た武司が顔をしかめて呟いた。
でも……私が本当に知りたい事は書かれていないよ。
どうしたら黒くて怖い人を追い払えるのかという事が。