鍵がかかっている引き出しを除いて。
「何処かに鍵はないかな? ここだけ開かないんだよね」
鍵穴を見てみると、サビがそこをふさいでいて、鍵があったとしても入るかどうかはわからないんだけど。
「どいてろ。どうせもう誰も使いやしねえんだ。ぶっ壊しても文句を言う奴なんかいねぇだろ」
そう言って武司は、引き出しをおもむろにつかむと、力任せに前後に揺さぶり始めたのだ。
ガタガタと机が揺れ、机ごと壊れてしまうのではないかと思ってしまう。
ミシッ、ミシッという音が聞こえて……派手な破壊音と共に、引き出しが言葉の通り引き出された。
その引き出しを机の上に置いて、自慢気な武司。
引き出しを壊すなんて……高広とやってる事がまったく同じなんだよね。
「おい、もしかしてこれじゃねぇのか?」
武司が手に取った本を見て、私の心臓はドクンと大きな音を立てた。
「Diary」と書かれたそれは、誰が見ても日記だ。
半世紀以上前に洋風の日記帳だなんて、不思議な気もするけど。