ただ話に入れないだけだと思うんだけどな。


まあそれでも、誰かが手を休めずに調べてくれているのはありがたいよ。


怒る遥から逃げるように、私は小川君の隣に駆けよった。


「どう? 何かそれっぽいの見つかった?」


「ずいぶん大雑把な質問だね。ここには魔法とか、そんな物はなさそうだよ。あるのは文芸作品ばかりだね。純文学、好きだったのかな」


指で本をなで、何個かにひとつ手に取って。パラパラと中身を確認する小川君。


この本棚は任せても大丈夫だと思えた。


書斎を調べ始めてしばらく時間が経過した。


本棚もだいたい調べ終わり、それらしい物は何もなく、私はあせりを覚えていた。


「これで最後……違うわね」


遥が調べた最後の本もハズレで、残すは机とその周りだけ。


「やっぱりよ、ないんじゃねぇのか? 大切な物なら持っていったんじゃねぇの?」


その可能性は否定できないんだよね。


だけど、ここでしか黒くて怖い人について知る事ができそうにないんだよ。


祈るような思いで机に近づき、引き出しを開けてみると……そこには便箋や筆記用具があるだけ。


次々と引き出しを開けても、それらしい物は何もない。