先に行くのをためらっている様子だったけれど、諦めたのか覚悟を決めたのか、小川君は階段に向かって歩きだした。
1歩、また1歩と階段を上る姿は、なぜだか応援したくなる。
ミシッ……。
ミシッ……。
メリッ!
「ひ、ひいいい!」
何か、板が悲鳴を上げているようにも聞こえるその音に、小川君だけじゃなく、私もドキッとしてしまう。
「が、頑張って! 小川君!」
そんな私の声も届いていないのか、これまた壊れそうな手すりに手を置いて、階段に神経を集中させている。
「こりゃあ……ダメか? まあ、床が抜けたらその時は、そこをよければいいだけだな」
何だかひどくない!?
そのために先に行かせたのかと思うと、小川君が可哀想に思えるよ。
何が何でも、階段を上りきってほしい!
祈りながら小川君を応援した数分。
2ヶ所ほど床が抜けた場所があったけど、それでも無事に二階に上がった小川君は、安堵したような声で私達を呼んだ。