「うん、あれが美子達の家。肝心な場所には私達は入れないけど、調べるのは父親の部屋かな」
美子の蘇生術の失敗、そして呼び出された黒くて怖い人。
まだ推測でしかないけど、真相が何であろうと構わない。
黒くて怖い人を追い払いさえすれば。
「とっとと行くぜ。化け物が出てくるなら出てこいってんだ」
そう言って、草むらをかき分けて武司が門に向かって歩きだした。
この前踏んだ草が、何事もなかったかのようにまっすぐ生えている。
繰り返さえる「昨日」は、時折私に変な感覚を植えつける。
何度も何度も同じ物を見て、私がやった事はすべて無駄だと言わんばかりに嘲笑っているかのよう。
武司に続いて門へと向かった私達。
朝の光を浴びる廃屋は、夜とは違った顔を見せる。
するどい恐怖はない。
あるのは「無」と言おうか……。
私がこんな気分になるのも、この廃屋のせいかな。
庭を通って玄関の前。
扉に巻きつけられた鎖を外して、私達は家の中に侵入した。