目を閉じ、呆れたように遥が首を横に振った。
確かにそれは大問題なんだけど、まだ問題はある。
「でね、それだけじゃないの。『赤い人』が怒ったら、『赤い人』に取り憑いている、黒くて怖い人が出てきてしまうの」
何か……自分で言っててバカげた作り話みたいだって感じちゃうな。
「赤い人」に黒い人か、とか言ってバカにされそうな気がするよ。
「『赤い人』と黒い人? じゃあ次は青い人でも出てくんのか? アホかお前は」
ほら……よりによって、武司にバカにされたよ。
他の皆も、武司の言葉で私を疑っているようだけど、中島君だけは違った。
「い、いや……森崎さんの言っている、黒い人は本当にいる。お、俺は見たんだよ! 森崎さんの背後にピタッとくっついてるモヤみたいな人影をさ!」
そうだ、中島君はホールで見てるんだ。
その直後逃げられて、私は死ぬ羽目になったんだけど。
「まあいいわ。それで? その黒い人はいったい何をするっていうの? 害がないなら放っておけばいい事だけど。そうじゃないんでしょ?」
「うん。黒くて怖い人は、人をだますんだ。私は『一昨日』と『昨日』、だまされて殺されたから」