それにしても、留美子が言ったキモヲタってのは言いすぎじゃないかな。


本人は気にも留めてなかったようだけど。


「それにしても中島君って優しいんだね。いじめられてる人を助けるなんて、なかなかできないよ」


私のその言葉を聞いて、少しムスッとした様子の高広。


怒ったかな?


私が中島君を褒めたりしたもんだから。


「それよりキモヲタだっての! 何なのあいつ! デブでメガネで気持ち悪い!」


玉子焼きを落とした恨みが、ついに小川君自身の外見にまで向けられる。


小川卓也君……苗字の「お」と、名前の「たく」、そしてその風貌からヲタクと呼ばれている、かわいそうなクラスメイト。


美雪が呪いを解くまでに、私達にできる事をしようと提案したかったけど……留美子も高広も機嫌が悪そうだし、それを切り出せるような雰囲気ではなかった。


翔太にしても、落ち着くまでもう少し時間がかかりそうで。


今動けないなら、放課後に動くしかない。


そう決めて、私はお弁当を食べた。


ヒビ割れた世界は、ここにいる私達にしか見えていない。


四日の間に慣れはしたけど、元のきれいな世界が懐かしくもあった。