皮肉たっぷりに言われた言葉も、誰かが助かった事がわかって悪い気はしない。


ただだまされて、無意味に死んだものとばかり思っていたから。


「その事なんだけどさ、皆に話しておかなきゃならない事があるんだ。できれば全員に話したいから、ここに来てほしいんだけどな……」


終わりが見えて、注意しなければならない事がふたつ。


それは、私だけじゃなくて皆に降りかかる事かもしれないから。


「いったい何だっていうの? まあ、明日香の事だからたいした話じゃないんだろうけど」


「悪かったね、私の話で。でも、これは本当にヤバい話なんだ。だから皆が知らなきゃならないの」


黒くて怖い人は、私だけしか狙ってないかもしれないけど、「赤い人」が武司を見て怒るのは死活問題だ。


「お、ゴミクズが来やがったな。俺が連れてきてやるよ。あいつはすぐに逃げるからな」


ニヤリと不敵な笑みを浮かべた武司は、そう呟いて校舎の中に入っていった。







……武司が怖いから逃げるんじゃないの?






今の笑みも、何か悪い事をしそうだったし。


「あとは日菜子と小川君か。あのふたりは待ってたら来るとして……ねえ、日菜子と何を話したの? 仲直りしたんでしょ? その割には気まずそうだけど」


「あなたには関係ないでしょ? 聞いてほしくない事だってあるんだから、そっとしといてよ。時間が解決してくれるんだから」