つまり、カラダを探す時間が稼げたという事だ。
「まずは一階ね。追い詰められて、あそこほど逃げ場がないフロアはないから。一番先に終わらせるよ」
工業棟に入り、遥が指差す階段の方に移動する。
「それにしても三神さん、自分で考えたの? どこから調べた方がいいって。一度やってるって明日香から聞いたけど、私は思いつかないかも」
階段を下りながら、日菜子が遥に尋ねた。
何か口ごもっているような感じで、ブツブツと言っているようだけど、それは背後にいる私達には聞き取れない。
でも、振り返って私達を見上げた遥は、少し悲しそうな表情を浮かべて呟いた。
「考えたのは私じゃないわ。だけど、それはあなた達には関係ない事よ」
その声に、嫌味は感じられない。
何か……悲しみと言うか、泣きだすんじゃないかと思うような、震える弱い声だった。
「まぁ、誰の考えでもいいよ。『赤い人』が来ないうちに、ここの一階を調べ尽くそう」
何だか変な雰囲気になってしまいそうだったから、できるだけ明るく言ってみた。