それでも今から調べるべきなのか、後回しにすべきか。
急な事でどうすればいいかわからないよ!
そんな私の耳に届いた声があった。
「三神ぃぃっ!! こっちに連れて来いやぁぁっ!!」
武司の声!?
図書室の前の廊下から聞こえたその声に、私はゆっくりと後ろ向きに階段を下りて、踊り場でかがんで様子を伺った。
遥が武司の声に呼び寄せられるように、東棟へと向かう廊下に入る。
「赤い人」を待ち構えるように、武司がゆっくりと西棟に歩いてくるのがわかった。
「袴田君! 任せたわ!」
「任されたぜ。東棟の三階はまだだ、調べろ!」
そう言うと同時に、「赤い人」が私の視界に飛び込んできた。
勢いよく北側から現れた「赤い人」が、廊下を滑るようにして勢いを殺す。
そして……武司を確認したのだろう。
笑い声がピタリとやんだのだ。
「アアアアアアアアアアアアアッ!!」
いきなりの咆哮。
「昨日」の事を覚えているのか、武司を見て恐ろしいほどの声を出す。
「気合いなら負けねぇぞコラァッ!! かかってこいやぁぁっ!!」
「赤い人」に勝るとも劣らない怒鳴り声。
結構近い位置にいるからうるさくてたまらないよ。
グッと腰を落とし、武司に飛びかかった「赤い人」。