そこに「赤い人」がやってきて、慌てて逃げようとして振り返ってしまった。


そんなところだろう。


渡り廊下を抜けて、工業棟に向かう廊下まで走って、曲がった所でようやくホッとひと息。


3人には悪いけど、私には高広みたいに「赤い人」と戦える力はない。


酷な言い方だけど、襲われてしまったのなら、見捨てるしかないのだ。


「ね、ねぇ……中島君達、どうなったの? さっき、声が聞こえたよね?」


「放っておきなさい。少なくとも中島君は死んだわ。香山さん、あなたも死にたくなかったら、行動には気をつける事ね」


日菜子の質問に冷たく言い放って、遥は工業棟へと続く廊下を歩いていった。


「明日香ぁ。私、くじけそう……」


「う、うん。頑張って早く終わらせよう。嫌でもやらなきゃならないんだよ」


今にも泣きだしてしまいそうな日菜子を励ましながら、私達は先を行く遥を追いかけた。


「赤い人」は生徒玄関前、私達は工業棟。


校内放送で移動しない限り、ピンポイントでここまでやってくる事はないだろう。