「遥は先に行ったんじゃないかな? 私達も行こうか」
階段を指差して、廊下の幅いっぱいを使い、ぐるっと回るように方向を変えた私は、ふたりと一緒に二階へと向かって移動を始めた。
人がいると心強い。
暗くて寒くて、ひとりでいると怖くてたまらないこの空間も、誰かがいてくれるからいる事ができる。
そのささやかな幸せをかみしめて、踊り場に着いた時……。
「……してあかくする~」
その歌は聞こえた。
「赤い人」が、二階の廊下を歩いている?
西棟じゃない事はわかる。
少し遠く……まだ東棟にいるのか、それとも図書室の前の廊下を通って西棟に向かっているのか。
その廊下の延長線上にある、この階段を下りるなんて危険な事はできない。
「ダメだ、あっちの階段から下りよう。『赤い人』が来てるかもしれない」
「う、うん。わかった」
ささやくような会話の後、すぐに階段を駆け上がったふたり。
私もそうしたいけど、移動しながら向きを変えないと「赤い人」に殺されてしまう。
踊り場を使って、弧を描くように向きを変えた私は、ふたりを追い駆けるようにして階段を上がった。