「仕方ないわね。じゃあ、まず西棟を調べましょうか」


小川君も教室の中に入り、ドアを閉めたのを確認してから私は立ち上がった。


西棟の三階。


一番北側はもう調べ終わったとの事で、私達はこれから南へと向かう。


東棟の三階に「赤い人」がいる限り、廊下は見つからないようにかがんで歩かなきゃならないのが辛いけど、その反面教室に入りさえすればそれほど行動に制限がないから気楽と言えば気楽だ。


まあ、ドアの小窓から見られないように気をつけなきゃいけないけれど。


「……ないわね。残り少ないから、見つからないのは当然だなんて考えたくはないけど」


そう言って窓の外、旧校舎の方を見る遥。


今回、「赤い人」が旧校舎に現れたなんて校内放送は流れていない。


だから大丈夫だとは思うんだけど……遥もその心配をしているのかな。


「旧校舎にはないよね? どこを探してもない時は……やっぱり行く事になるのかな」


「ないとは言いきれないからね。旧校舎じゃない事を祈るしかないでしょ。私達がどこは嫌だって言っても聞いてくれないんだから」


私の言葉に遥が冷静に答える。