背中の肉をチビチビと削ぎ落とされているような、侵食されている感覚。
ドス黒く、冷たい空気がいつまでもそこにあって、あとどれくらいこのままいなきゃならないのか。
1分も経っていないのだろうけど、もう何十分も恐怖にさらされている気さえする。
「お顔もお手てもまっかっか~」
声が動きだした……。
この教室の前から離れていく。
でも、まだ動けない。
危うく安心して、息を吐くところだった。
そんな事をした瞬間、「赤い人」は踵を返してこのドアを突き破るだろう。
遠くに……せめて、どこかの教室に入るまでは動けない。
「髪の毛も足もまっかっか~」
機嫌よく唄いながら、「赤い人」がどこかの教室に入ったのだろう。
カラカラと、ドアが開く音が聞こえて、歌声が小さくなった。
ここにいるのはまずいな……早くここから逃げないと。
東棟の二階に、いや、より安全な場所と考えると、西棟の三階まで行った方がいいかもしれない。