この付近に「赤い人」がいないのならと、私は廊下を走った。


基本的には慎重に、時に大胆に。


足が遅い私は、見つからないように慎重になるしかないんだけどね。


走って走ってたどり着いた廊下の一番北側の教室。


ドアを開けて中に入ったその時だった。













『赤……が、東棟三……現れました。……気をつけてくだ……』












最悪の事態を告げる言葉が、スピーカーから流れたのだ。


最悪の事態が起きてしまった。


私と武司は両端の教室にいて、「赤い人」がどこに現れたか次第では、心配していた通り追い詰められてしまう事になるのだから。


身動きが取れず、ドアの前、廊下の物音に耳を澄ませていたその時。









「あ~かい ふ~くをくださいな~」










ドアのすぐ向こう。


ほんの少しでも動けば気づかれてしまいそうな場所から、その声が聞こえた。