なかなか校内放送が流れない事は以前にもあった。


その場合、現在の「赤い人」の居場所がわからないから、慎重にならざるをえない。


足音と歌声……それを少しでも離れた位置から聞き取らないと、気づいた時には手遅れになる可能性がある。


東棟に入り、近くにある階段を上りながら、耳に意識を集中させる。


階段は嫌いだ。


反響して、どこから聞こえてるかわかりにくいし、廊下で物音がしてても聞き取りにくいから。


まるで階段だけが別空間のような気がするよ。


「あのゴミクズがどこで死んだかだな。工業棟辺りで死んでくれてると助かるんだけどよ」


「それがわからないからこうやって物音を聞かなきゃならないんでしょ。少し静かにして」


「テメェ、いつかぶっ飛ばすぞ」


そんな話をしているからと言って、「赤い人」が近くにいるわけではないのだけど。


注意はした方がいい。


足音をなるべく立てないように歩いて到達した三階。


シンと静まり返り、私達以外の生物は存在しないように思える。


「赤い人」は幽霊だからさ。